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中学2年生の時に、全日本選手権で史上最年少優勝を果たした張本智和選手。2021年夏に行われた東京オリンピックでは、卓球男子団体の銅メダル獲得に貢献するなど輝かしい成績を残し、日本の卓球界を牽引しています。アスリートライフスタイルを築いていく上で、どのような心構えを持って卓球と向き合ってきたのか、さらなる高みを見据える張本選手に話を聞きました。
―中学から地元仙台を離れて、JOCエリートアカデミーに進学した理由を教えてください
張本小学校3年生の時くらいから、年代別のナショナルチームに選ばれてナショナルトレーニングセンターに行くことが増えました。そこでJOCエリートアカデミーの選手に会うことも多かったのですが、みんなしっかりしていて自分にとっての憧れの存在でした。その頃から、自分が中学生になる時は、ここに入りたいなと思っていました。
―JOCエリートアカデミーでは、競技力だけでなく知的能力や生活力も育んだと思います。環境を変えて挑戦した成果が現れ、中学2年生の時には全日本選手権で史上最年少優勝を達成されました
張本今考えると本当に信じられないような結果を残したなと思います。その時はあまり何も考えず、ただがむしゃらにやっていただけでしたが、今思うとあの時の自分がなければ今の自分もないので、中学2年生の時にあのような活躍をすることができて、本当に良かったなと思っています。
―大会に臨むにあたって、具体的な目標は設定していましたか?
張本明確ではないですが、ぼんやりと「高校までに全日本選手権で優勝したい」と思っていました。水谷隼選手は高校2年生の時に優勝しているので、それまでにしたいなという考えはあったのですが、まさかこんなに早く優勝できると思っていなかったので、自分でもびっくりしました。
―自らを躍進へと導いた原動力は何だと考えていますか?
張本中学1年生までは、ほとんど順風満帆であまり挫折をすることもなくて、思うような結果を残してきたのですが、その年の全日本選手権のジュニアの部で、初めてベスト8に終わってしまったんです。1ヶ月前の世界ジュニア卓球選手権では優勝していたのに、全日本選手権では結果が出せなくて。その時に初めて「あれ?おかしいな」と感じました。「これでは東京オリンピックに間に合わない」と。初めて危機感を持って、練習に取り組みました。
―初めての挫折を味わった時、自分自身にどのような変化を起こしましたか?
張本規定練習以外での自主練習を増やしました。このままではダメだと強く思ったので、朝早く起きてサーブ練習をやってみたり、みんなが7時に練習を上がっても自分は8時までやってみたりと、そうした日々の積み重ねが良くできていたと思います。
―そうした時期に自らを奮い立たせてくれたものは何ですか?
張本自分は人から言われるとやりたくなくなるタイプなんです。あの時はみんなが「大丈夫?」と心配してくれて、とても気を遣ってくれていましたが、逆にそれでは「刺激が足りない」と感じたのか、本当に「やらなきゃ」ということを強く感じました。もしあの時「やれ」と言われていたら、頑張れなかったかもしれないなと思っています。
―卓球の魅力はどこにあると感じていますか?
張本ラケット競技の中で、一番相手との距離が近いのが卓球です。だからこそ、技術以上にメンタルが左右される競技だと思っていて。本当に辛い時は、相手の顔を見るのも嫌なくらい「今日は心を読まれているな」と感じることもありますし、逆に自分がノッている時は「相手は不安そうな顔をしているな」ということもすぐに分かります。その心の読み合いや、見えないところでのメンタルの勝負というものが詰まっている競技だと思います。
―試合では緊張するタイプですか?
張本自分は人よりも緊張する方だと思います。「もう試合はしたくない」と思うほど緊張することが多いので、無理矢理コートに入っているという感じです。もちろん入ってからは、「やるしかない」という気持ちになるのですが、最初は結構追い込まれているタイプだと思います。
―その緊張と上手く付き合い、強いメンタルを保つために大切だと思うことはありますか?
張本相手に負けたくない、という気持ちでいることが一番ですね。自分がもし諦めてしまったら、相手は次のステップに行ってしまいます。それは何とか阻止したいですし、自分が絶対に上がるんだという強い気持ちを保つことで、しっかり頑張ることができています。
―東京オリンピックを終えて、改めて感じていることはありますか?
張本自分が小学生の頃から目指してきた舞台に立つことができましたが、大会はあっという間に終わってしまったという印象です。もっと長く東京オリンピックを感じていたかったなという思いもあるのですが、(卓球男子団体で)最低限メダルは獲得できましたし、そこはよかったかなと感じています。ただ、やり残したこともたくさんあるので、それは次のパリオリンピック以降に繋げていけたらいいなと思っています。
―目標を達成するために大切だと思うことは?
張本やはり、自分自身が一番の壁だと思いますし、相手以前に自分自身に打ち克つことが勝利に繋がると感じています。自分に負けてしまうこともたまにはあるのですが、そういう時はこれまで辛かったことを思い出したり、悔しい経験を思い出すことで、「また頑張らないと」と思うことができるので、自分に甘えそうな時ほど苦しい経験を思い出して卓球と向き合うということが、自分にとっては一番良い方法かなと思っています。
―さらなる高みを目指していく中で、今の目標を教えてください
張本競技的な目標は、オリンピックで一度は絶対に金メダルを獲ることです。もうひとつは、憧れられるような選手になることで、金メダリストにも色々な金メダリストがいると思いますが、その中でも最も尊敬されるような金メダリストになることが自分の目標です。一人の人間としても、選手としても、“一番の人”になれるように頑張りたいと思います。
―それでは最後に、これから世界を目指すアスリートたちにメッセージをお願いします
張本まずは目標をしっかり持つことが大切です。その目標を達成するためにはどうすれば良いかということを自分でしっかり考えて、しっかりと努力を続けていけばきっと一つひとつ目標は叶うと思います。自分を信じて、自分に負けずに、ぜひ頑張って欲しいです。
2003年6月27日生まれ。宮城県仙台市出身。卓球選手だった両親の影響で2歳の頃からラケットを握り、実力を伸ばす。小学1年生の時には全日本選手権(バンビの部)で優勝し、以降同大会で6連覇を達成。中学進学と共にJOCエリートアカデミーに入校しシニアの大会に本格的に参戦すると、世界選手権では史上最年少となる13歳でベスト8に進出、中学2年時の全日本選手権でも史上最年少優勝を果たすなど、国内外の大会で華々しい結果を残した。2021年に行われた東京オリンピックでは、男子団体の銅メダル獲得に貢献。戦型は右シェークドライブ型。世界ランキング4位。(2022年2月時点)。
中学1年生の時の大会で思うような結果を残せず、初めて危機感や焦りを感じたという張本選手。練習時間よりも少し早く来て自主練習に励み、誰よりも遅くまでトレーニングをするなど、毎日コツコツと重ねた努力が翌年の史上最年少での全日本制覇という結果に結びつきました。このように、強くなるためにするべきことを自分自身で考え、行動に移すことは、思い描くアスリートライフスタイルを築いていく上でとても重要なことです。また、張本選手は「選手だけではなく、一人の人間として尊敬される金メダリストになること」が今後の目標だと言います。
あなたは、どのような選手になりたいですか?どのような強みを活かしていきたいですか?そのために自分にできることを考えて、ぜひトライしていきましょう。