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日本版FTEM

よくあるご質問(FAQ)

1. FTEMとは何でしょうか?
 「FTEM(Foundation、Talent、Elite、Masteryの頭文字)/エフテム」は、科学的な根拠情報に基づき作成されたスポーツとアスリート育成の包括的な枠組み(フレームワーク)のことです。詳しくは「FTEMとは何だろう?」をご確認ください。

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2. FTEMは、誰が何の根拠に基づいて開発しましたか?
 「FTEM」は、2013年にオーストラリア国立スポーツ研究所(AIS)の研究チームにより開発されました4)。このFTEMには、20年に及ぶ多くの経験豊富な専門家の実践知と学術研究の理論知が取り入れられています。
 特に、アスリート育成に精通する研究者による国際的な提言(ベストプラクティス)がこの枠組み(フレームワーク)に体系的に組み込まれています3)

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3. そもそもアスリート育成の枠組み(フレームワーク)は必要でしょうか?
 多くの専門家ら1)5)7)は、関係者との連携・協働を促すために、競技の枠を超えてシステムレベルでの共通言語や統合された枠組みが必要であると強く述べています。実際、国際オリンピック委員会(IOC)は、ユース年代のあらゆる若者がスポーツで成功する機会をできる限り提供するために、以下のことを推奨しています。
 「アスリート育成の枠組みは、アスリート育成の多面性を踏まえて、身体的要因や成熟度を踏まえた歴年齢に基づく処方箋ではなく、発育発達段階で認められている『ベストプラクティス』に基づいた包括的なもの、また、アスリート育成に固有の複雑さや非直線性を柔軟に受け入れることができるものでなければならない」3)

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4.「FTEM」と「LTAD(長期競技者育成理論モデル)」は、似たような概念ですか?
 「LTAD」2)は、生理学的な視点から構築された概念モデルです。特に、LTADの各段階で使われる用語(例:Learn to Train、Train to Train、Train to Compete)からも主にアスリートのトレーニングや競技大会に焦点が置かれていることが読み取れます。また、LTADの概念は特定の育成段階や年齢に対する指導指針が中心です。
 一方で「FTEM」は、より広範な枠組み(フレームワーク)であり、普及・発掘・育成・強化に関わる活動と、その関係者の役割と責任(例:コーチング、教育、目標設定、スポーツ医科学の支援)を体系的に整理できる包括的な概念です。
 また、FTEMやLTADの他にも「アスリート・タレント育成モデル (ATDE)5)」等の新しい概念モデルも出てきています。これらを踏まえて、各スポーツのねらいの見合った枠組み(フレームワーク)やモデルの活用が求められます。

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5.なぜFTEMは「モデル」ではなく「枠組み(フレームワーク)」なのでしょうか?モデルと枠組み(フレームワーク)は同じものですか?
 「モデル」は、とても正確で規範的な特徴があります。一方、「枠組み(フレームワーク)」は、柔軟性が高く抽象化できる特徴があります。
 上記を踏まえ、FTEMは枠組み(フレームワーク)として説明されています。

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6. FTEMはオーストラリアで開発されたようですが、なぜ日本でも独自の枠組み(「日本版FTEM」)が開発されたのでしょうか?
 アスリート育成の道すじ(パスウェイ)は、国の文化や社会的文脈、世界の動向などにより変化するため、日本の競技スポーツの基盤を踏まえた上での枠組み(フレームワーク)が必要と考えられ、2019年に日本スポーツ振興センターでは「日本版FTEM」6)を開発しました。日本版FTEMでは、オリジナルのFTEMを改良して、日本におけるスポーツとアスリート育成の要因と要素が統合された枠組み(フレームワーク)になっています。

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7. 「日本版FTEM」は誰が使うのでしょうか?
 アスリート育成に関わる幅広い関係者が活用できます。例えば、中央競技団体の関係者や都道府県競技団体関係者、コーチ・指導者、アスリートが挙げられます。さらには、アスリートを取り巻くアントラージュも活用できます。

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8. 私たちの中央競技団体では、既に育成の全体指針があります。私たちは、この日本版FTEMを活用して既に策定した育成指針をもう一度一から考え直さなければならないのでしょうか?
 いいえ、全くそうではありません。
 第一にFTEMの概念は、長年にわたる経験豊富な専門家による実践知と学術研究の理論知に基づいて開発されているため、アスリート育成における全く新しい概念ではありません。また、FTEMは、普及・発掘・育成・強化に関わる活動や関係者の役割と責任を組み込むことが可能です。そのため、中央競技団体に既にある資源を、日本版FTEMに当てはめて整理することで、現状と理想とのギャップ、足りない活動またはその優先順位、関係者の役割と責任の整理、などを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
 大事なことは、そのスポーツのアスリート育成に不要な要素を取り除いていくうちに必要な要素まで取り除かないこと、そしてアスリート育成に必要な要素を確実に中央競技団体として残していくことです。

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9. 中央競技団体として競技別パスウェイモデルを構築した後、新たな枠組み(フレームワーク)が提唱されたら、それに基づいて改変しないといけないのでしょうか?
 今後も様々な機関や研究者等が新たな枠組み(フレームワーク)やモデルを提唱する可能性はあります。しかし、大事なことは、中央競技団体がこれまでに構築した競技別パスウェイモデルを基に、新しい知見やエビデンスを踏まえて常に最新のモデルに改良していくサイクルを確立することです。

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10.スポーツ基本計画に謳われているスポーツ立国を真に実現するためには、多くの関係者も日本版FTEMの活用に取組む必要があるということでしょうか?
 より多くの中央競技団体が日本版FTEMを活用することで、日本のスポーツ界全体が調和・改善され、様々な「連鎖反応(ノックオン効果)」を起こす可能性があります。そのためには、中央競技団体が作成する選考基準や尺度等が競技の枠を超えて普及・発掘・育成・強化に関わる活動の全ての関係者に見える化され、共有される必要があります。
 しかし、スポーツ基本計画では、スポーツを「する」「みる」「ささえる」の観点から、様々なことが謳われています。日本版FTEMは、それらを俯瞰的かつ横断的に見られる枠組み(フレームワーク)として活用できる可能性がありますが、スポーツに関わる全てを網羅できる万能の‘モノサシ‘でないことも事実です。
 大事なことは、多くの関係者が同じ目的に向けて歩調を合わせてスポーツに取り組めるようになることです。日本版FTEMがその一助になればと考えています。

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参考文献

  1. 1) Bailey, R., Collins, D., Ford, P., MacNamara, A., Toms, M., & Pearce, G. (2010). Participant development in sport: an academic literature review. Commissioned report for Sports Coach UK. Leeds: Sports Coach UK.
  2. 2) Balyi, I., & Hamilton, A. Long-term athlete development:trainability in children and adolescents:windows of opportunity, optimal trainability. National Coaching Institute British Columbia & Advanced Training and Performance Ltd., Victoria, BC, 2004.
  3. 3) Bergeron, M.F., Mountjoy, M., Armstrong, N., Chia, M., Côté, J., Emery, C.A., Faigenbaum, A., Hall, G., Kriemler, S., Léglise, M., Malina, R.M., Pensgaard, A.M., Sanchez, A., Soligard, T., Sundgot-Borgen, J., van Mechelen, W., Weissensteiner, J., & Engebretsen, L. (2015). International Olympic Committee consensus statement on youth athletic development. British Journal of Sports Medicine, 49:843–851.
  4. 4) Gulbin, J.P., Croser, M.J., Morley, E.J. & Weissensteiner, J.R. (2013). An integrated framework for the optimisation of sport and athlete development. Journal of Sports Sciences, 31(12): 1319-1331.
  5. 5) Henriksen, K., Larsen, C., & Christensen, M.K. (2014). Looking at success from its opposite pole: The case of a talent development golf environment in Denmark. International Journal of Sport and Exercise Psychology, 12(2):134-149.
  6. 6) 衣笠 泰介, 舩先 康平, 藤原 昌, Morley Elissa, Gulbin Jason (2019) 我が国のスポーツとアスリート育成における国際的な包括的枠組みの適用: 「日本版FTEM」の開発. Journal of High Performance Sport, 4: 127-140
  7. 7) Pankhurst, A., Collins, D. & Macnamara, A. (2013). Talent development: linking the stakeholders to the process. Journal of Sports Sciences, 31(4):370-380.