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“二刀流”プレーヤーとして活躍し、4年目の2016年には日本一に大きく貢献。自身もシーズンMVP、投手および指名打者の2部門でベストナインを受賞するなど、今や日本を代表するプレーヤーとなったプロ野球・大谷翔平選手。高校入学当時は「まさか自分が160キロを投げられるなんて思っていなかった」と語る彼が、どのようにして目標を達成してきたのか、その方法や重要ポイントに迫ります。
―高校時代には「目標達成表」を作成し、方法や過程を明確にされたそうですが、どんな効果が生まれたのでしょうか?
大谷紙に書くにあたっては、期限と数字をしっかり入れるというのが大事になってきます。それを書くことによって目標を明確化して、いつまでにやらなければいけないということをしっかりと考えながら取り組むことができるので、ぼんやりと思い描くよりは目標に近づきやすいと思います。
―「紙に書く」ことが大事だということでしょうか?
大谷自分が書いたからには責任を持って取り組まないといけないですし、やると決めたからにはやらなければいけないので、そういう意味ではただ思っているよりも書いてどこかに貼ったり常に見たりという方が、目標を書いた時の気持ちになるんじゃないかと思っています。僕は目標達成表をすぐに見られるように部屋にも貼っていましたし、あとは全員がトレーニングルームの天井に貼っていましたね。
―具体的な「数字」や「期限」を設けることも重要?
大谷そうですね。「毎日バットを振る」というよりは、「毎日何分間」「毎日何本振っていく」など具体的なことですね。そのくらい明確でないとちゃんとこなせないんじゃないかなと思います。
―「目標達成表」に「スピード160キロ」と書かれていて、実際、高校3年の夏に実現されました。
大谷実は僕も最初、160キロ投げられるとは思っていませんでした。当時はプロでさえ日本人で160キロを投げるピッチャーは佐藤由規さん(東京ヤクルト)くらいしかいなかったので、「まぁ、無理だろうな」と。でも、監督やトレーナーが「できないはずはない。トレーニング次第で絶対に投げられるようになる」と言ってくださったので、「じゃあ、どのくらいずつ球速を上げていけば届くのかな」と考えるようになりました。そういう単純計算することも目標設定のうちに入ると思うんですね。それで「1年間で5、6キロずつ上げていけばいいのかな」と考えることで、自分でも「なんかできそうだな」と思えるようになりました。
―「目標達成表」には、競技面以外にも「人間性」や「運」という項目も書かれていました。
大谷最後、試合に勝つか負けるかの微妙なラインはそういう「人間性」や「運」などの微妙なところで左右されるのではないかと思うので、常にそういった部分をしっかりやっていけば、大事な場面になった時に思い切ってやれるんじゃないかというのはあります。
―勝つか負けるか、ここぞという大事な場面に必要なものとは?
大谷「このバッターよりも、自分はちゃんとやってきた」という自信だと思います。それがあるかないかでは、パフォーマンスも全く違ってくると思っています。僕は誰よりもしっかりと野球に向き合い、練習に取り組んできたという自信がある。そこは誰にも負けていないと思っていつもプレーしています。
―そういうところで「人間性」が表れるということでしょうか?
大谷そうですね。それに、野球だけができればいいという問題でもないと思っていますし、これから生きていくうえで、ずっと大事になってくる、必要になってくる部分かと思っています。
―高校時代、佐々木洋監督には「『楽しい』かどうかではなく、『正しい』かどうかで行動しなさい」と指導されていたそうですね。
大谷はい、よく言われましたね。やっぱり楽しくても正しくないことって沢山あると思いますし、楽しい方向に進んでいくことは結構簡単なことだと思うんです。逆に正しい方向に進んでいくことは、すごく大変で難しい。だからこそ、しっかりと自分自身で制御して、正しく行動できるかどうかということがすごく大事だと思っています。
―人間性を磨くために、普段の生活や練習から大切にしてきたことはありますか?
大谷気づいたらゴミを拾うこと。これはもう高校の時からずっとですね。
―そうしてきた理由は何だったのでしょうか?
大谷例えば、ゴミがここに落ちていたとして…だいたいの人は気付いても通り過ぎていきますし、僕も1回目は通り過ぎますが、ただ、後ろから肩を叩かれてるような、そこで「拾わないのか?」っていうことを言われているような感覚に誰しもがなると思うんです。そこで戻って拾えるかどうかの差が練習にも出てくるのではないかと思っています。
―競技以外の部分で、大事にしている時間はありますか?
大谷睡眠ですね。今はトレーニングした日は10時ですとか10時半に寝ます。1時間、2時間死ぬ気で頑張ったトレーニングの成果が返ってくる割合をなるべくその日のうちに100%にしたいという感じですね。
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―シーズン中、登板の日の午前中は映画を観られるそうですね。
大谷はい。結構、緊張するタイプなので、映画を見たり、本を読んだりしてリラックスしています。何もしないよりは勉強にもなりますし、映画を1本観たり、本を1冊読むことで、また違う考えが出てきたりするので、パフォーマンスにもつながればと思っています。
―現在のご活躍の裏には、これまで沢山の失敗や挫折があったと思います。そういう時はどのようにして次に進まれてきたのでしょうか?
大谷負けた日もそうですが、1週間、2週間はやっぱり落ち込みますね。今シーズン優勝していなかったら、それもまた落ち込んでいたと思うんですけど、それをどうやって次につなげるかということが大事かなとは思います。僕は無駄な試合や無駄な練習というのはないと思っているんです。頑張って何年続けても結果が出ないという練習の仕方というのは確実にあると思うんですが、それを失敗だと気づいて違うことに取り組めば、そこで1個「発見」があって、それがどんどん成功につながっていくのかなと思っています。僕はまだ、自分を「成功者」とは思っていないんです。むしろ「失敗」と「成功」を繰り返している段階ですし、それをいろいろ試して次につなげていこうと考えています。おそらく、これは現役中ずっと続くんでしょうね。そうして、最後に現役を終えた時に「これが良くて、これがダメだった」ということを、次の世代の人たちに伝えていけたらと思っています。
―例えば、高校時代には3年の春、センバツで初戦敗退を喫しました。あの時は、どういうふうに夏へつなげていったのでしょうか?
大谷本当に悔しくて、その時の新聞を自分の部屋に貼りました。やっぱり「春は春だ」で終わりにはしたくなかったんです。「負けて良かった」なんて思ったことは1回もないですし、悔しい気持ちが次に向けてのモチベーションにはなったと思います。
―入団当初は「二刀流」について反対の声も多く聞かれました。それでもやり続けてきた理由は何だったのでしょうか?
大谷人それぞれの意見があるので当然かなと感じていました。僕自身は、失敗したら失敗したでいいかなっていう(笑)。僕の中ではそれくらいの感覚ですね。それもいつか僕にもつながると思いますし、その後の子たちのいい材料になるんじゃないかくらいの気持ちでやっていますね。いい成功材料として取り扱われれば、それはそれで一番幸せなことですけど。
―失敗することの怖さはないのでしょうか?
大谷うーん、何をもって失敗か、僕にはよくわからないですね。2つやることをやめて、1つに絞って成功すれば、それはそれで成功だと思いますし、2つやっていたからこそ成功するかもしれない。そう考えれば、2つやることが失敗とは単純には言えない気がするんです。
―最後に、これから頑張っていこうとしているアスリートたちにメッセージ、アドバイスをお願いします。
大谷競技に限らず、色々な分野ですごい選手がどんどん出てきてくれたら、みんなワクワクすると思いますし、僕もワクワクすると思うので、一緒に頑張って盛り上げていけたらなとは思っています。僕からアドバイスなんてものは言えませんが、なるべくできることは2つ並行しながらやるように心がけています。例えば、お風呂に入りながら本を読むですとか、時間は限られているのでうまく使っていきたいなと思っています。その時にどう思っているかにもよりますが、将来も野球に関わりたいという気持ちもあるので、少なくとも自分がやってきたことについては何か残したいとは思っています。
小学3年から硬式野球を始め、私立花巻東高校に進学。同高2年夏、3年春と2度甲子園に出場するも、いずれも初戦敗退。
2013年にドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに入団。
1年目から投手、野手の両方で起用され、2015年は最多勝、最優秀防御率、最高勝率の投手部門3冠を獲得。2016年は打者としても自己最多の22本塁打を記録し、投打にわたってチームの10年ぶり日本一に貢献。パシフィック・リーグ最優秀選手のほか、ベストナインにも史上初めて投手と指名打者の2部門で選ばれた。
「2016日本通運クライマックスシリーズ・パ」ファイナルステージで記録した球速165キロは日本球界最速。
193センチ、92キロ 右投左打
アスリートライフスタイルは夢を描くことや目標を立てることから始まります。
目標設定ができてはじめて、それを達成するためにやるべきことを考え、自らのアスリートライフスタイルを築くことになります。
目標設定において大切なことは、大谷選手が話していた「ぼんやりと思い描くのではなく、期限と数字をしっかり入れる」つまり、具体的で明確な目標を立てることです。また、パフォーマンス向上のためには「人間性」も左右するのでは︖という大谷選手の言葉からも、単に練習をすることだけでなく様々な角度からパフォーマンス向上に必要な要素を考えることも大切です。
大谷選手のお話を参考に、長期・中期・短期で目標を立て、アスリートライフスタイルを実践してください!
紙などに3×3の9マスを書き、それを埋めていくものです。
中心のマスに「夢(又は到達すべき目標)」を書き、その他の8つのマスにその夢を達成するための項目を書きます。さらに、その8つのマスごとに具体的な項目を設定して完成させます。
小さな目標(項目)を達成していくことで、徐々に大きな目標が達成できるようになり、また、強制的に項目を出さなければいけないため、新たな気付きが生まれたり、必要な事柄を整理し、思考を深めていくことができます。
大谷選手の場合は、8つの目標設定を達成するために具体的な行動・事柄の設定をしています。