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「T」の段階は、中央競技団体から将来性を見出される段階から強化指定を受けるまでの、4つの段階(T1~T4)に分かれています。
この段階では、「タレント発掘・育成(TID)」や「スポーツ科学教育プログラム」等、TID専門家やコーチ、競技団体、保護者から意図的なプログラムが数多く展開されます。
Tの段階の育成は、TID専門家や競技団体、家族、クラブ、学校、スポーツ統括団体等が重要な役割を担っています。
下の様々なベストプラクティス(最良の方策)を意識して、アスリート育成パスウェイについて考えてみましょう。
「T1」は、国際競技力の強化を目指し、将来性豊かなタレントやアスリートを科学的分析やコーチ・スカウトの眼によって見出す段階(スポーツタレントの発掘)です。
また、障がい者スポーツにおいては、障がいの程度を評価する「クラス分け」を通して将来性を見出します。
「T2」は、T1の段階で見出されたタレントやアスリートに対して、競技の専門的(技術・戦術)能力や心理的スキル、生理学的特性等を見極めるため、一定期間を設ける段階です。
「T3」は、アスリートが国際競技大会でより良い成績を残すため、高いトレーニング量と適切な競技大会への参加に専念する段階です。 この段階では、ドロップアウトや実績不足を防ぎ、シニア代表レベルまでスムーズに移行させるために多様な支援を行う段階です。
「T4」は、アスリートが実績を残し、突破口を開いたことで努力が報われる段階です。
具体的には、「年代別強化指定選手」や「シニア強化指定選手」、「年代別国際競技大会メダル獲得選手」等が該当し、シニア代表への選考やスポーツ推薦合格等の結果を得て、中央競技団体等による育成・強化活動や支援が大幅に拡大することが考えられます。
タレント発掘の手法 | タレント発掘プログラムは、ハイパフォーマンススポーツでの成功の可能性を秘めた将来性豊かなアスリートを見出すために設計される。 | Vaeyensら, 2009 |
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競技種目に特化した競技別のタレント発掘・育成が求められている | Bergkampら, 2018 | |
ライフセービング/体操競技からスケルトンへ種目転向したアスリートは、14ヶ月間で約300回のスタートシュミレーションと約220回のトレーニング・競技大会の経験後に、1名がオーストラリア代表としてトリノ冬季オリンピックに出場した。 | Bullockら, 2009 | |
早期専門化、競技専門的トレーニングと競技大会、思春期におけるタレント発掘・育成プログラムへの制度上の関与は、ハイパフォーマンススポーツでの成功とは関連していない。 | Vaeyensら, 2008 | |
TIDの予測因子は、一貫性がなく信頼性に欠けるものであった。 | Johnstonら, 2018 | |
複数の要因が複雑に相互作用するアスリート育成を的確に捉えるための理論的根拠として「動的システム理論」を用いることができる。 | Phillipsら, 2010 | |
TIDの効果を最大化するための根拠に基づいたベストプラクティスの方策について、コーチやハイパフォーマンスマネージャーを含むすべての主要な関係者に対して継続教育を行う必要がある(特にTID戦略の連携、コミュニケーション、一貫性について明確にし、種目転向の方法も学ぶ必要がある)。 | Weissensteiner, 2017 | |
コーチの眼 | 比較的年上または早熟の子どもを「才能あり」とコーチが判断するのはよく見られる偏見であるため、タレント発掘には、子どもの発育・発達段階を踏まえて、主観的な判断を行うコーチやスカウトが求められる。 | Mann & van Ginneken , 2017 |
これまでコーチの眼によるタレント発掘は、「自分の中で正しい」とする主観的な判断で行われていた。しかし、何を正しいと感じるかは、これまでのタレント発掘の経験、求めるタレント像、コーチング文化に大きく影響される。 | Lund & Söderström, 2017 | |
コーチがスポーツタレントを評価する際は、成熟度の個人差を考慮し、これまで顕在化されていなかったアスリートの長所と短所を見極める必要がある。 | Cummingら, 2017 | |
遺伝と環境 | タレントについて考える時、「遺伝か環境か」の論争は広く行われており、現時点で明確な答えはない。 特に遺伝子検査は、タレント発掘ではなく、スポーツ参加へのリスク評価として用いられるものである。 |
Breitbachら, 2014 |
遺伝子検査は、タレント発掘やトレーニングの個別処方には役立たない。 | Webbornら, 2015 | |
出生地・出身地効果 | 小都市(人口10万人未満)の出身者とユース年代のアイスホッケー参加者の数との間に有意な相関関係があったことから、小都市の地域はスポーツ参加を促進させる可能性がある。 | Turnnidgeら, 2014 |
相対年齢効果 | 相対年齢効果(RAE)とは、暦年齢とそれに関連する体格差(身長など)、年齢別のグループ選抜の結果として生じる現象であり、即時的なスポーツ参加への制約と長期的な達成の制約の両方に関わる。 スポーツ全般にRAEのリスクは少なからずあり、同学年でも比較的若い子ども(早生まれ)は依然として不利な状況にある。 |
Cobleyら, 2009 |
相対年齢効果は、アイスホッケーの選手や女子でも広く見られる。 | Turnnidgeら, 2014 ;Smithら, 2018 | |
同学年の子どもの生物学的成熟度を考慮すべきであり、一部の子は他の子より早熟であったり晩熟であったりする。 | Cummingら, 2017 | |
一般的に年齢別の競技大会は、子どもたちがスキルと成熟度が同レベルの子どもたちと競争できるように設計されるものである(最もよく使われるのは、U―11等の単年度の年齢別グループ)。 相対年齢効果を減らすには、子どもの誕生月の情報だけでなく、競技中に着用するゼッケン番号を年齢順に並べることが有効とされている。 |
Mann & van Ginneken, 2017 | |
パラアスリートの発掘 | 障がいのある若者のタレント発掘・育成に関する研究はほとんどない。 | Houlihan & Chapman, 2017 |
クラス分けの制度 | パラスポーツの独自の制度として、クラス分けの制度がある。どのアスリートがどのパラスポーツで活躍するかは、どのクラスになるかが大きく影響する。クラス分けの目的は、国際パラリンピック委員会(IPC)がパラスポーツの普及のために適格な障がいの種類による競技パフォーマンスに与える影響を最小化することである。 | Tweedy & Vanlandewijck, 2009 |
意図的な練習 | 音楽家、数学者、テニス選手、競泳選手、長距離ランナー等の生まれ持った才能は、実際には最低10年間継続された厳しい練習の結果が反映されたものである。 | Ericssonら, 1993 |
目標設定(ベンチマーキング) | U13とU15のサッカー選手を対象に、スプリント能力、跳力、方向変換能力の2年間の順位相関を調べた結果、中でもスプリント能力がタレント発掘の指標(ベンチマーク)として有用と思われた。 | Hirose & Seki, 2016 |
意図的な計画 | 意図的な計画とは、種目転向したすべてのアスリートを対象に、質の高いコーチング、技術指導、スポーツ科学・医学の支援を提供し、アスリートのポテンシャル(潜在力)を確実に引き出すプログラムを計画することである。 | Bullockら, 2009 |
タレントの種目転向(最適化) | 種目転向(最適化)の取組は、アスリートが最高の状態で競技を続けるための新たな道すじを提供することで、最終的には主要な競技大会で成功するための国際競技力強化につながる。 | MacNamara & Collins, 2015 |
ファストトラック(短期育成)による躍進(ブレークスルー) | スケルトンに種目転向(最適化)したアスリートは、14ヶ月後の意図的な計画によるファストトラック(短期育成)を経てオーストラリア代表としてトリノ2006冬季オリンピック競技大会に出場した。 | Bullockら, 2009 |
コーチャビリティ(コーチングを受ける能力) | 成功するアスリートは、探究心、指導への姿勢、コーチへの信頼感が強いこと等が分かっている。そのため、コーチャビリティ(コーチングを受ける能力)とは、オープンにコーチングを受け入れる能力があり、まめで変化への意欲や学習能力のある者と定義される。 | Giacobbiら, 2002 |
コーチャビリティは、パフォーマンスと能力を向上させるために必要な性格(例:同調性、経験への寛容さ)と動機づけの要素(例:達成動機)の組み合わせを反映した多次元的な構成要素である。 | Theeboomら, 2014 | |
成長志向、 「タレント」ラベルづけの影響 |
成長思考の者は、才能や能力を自分が開発できるもの、つまり努力や練習、指導によって実を結ぶものと考えている。また、才能とは、自身が築き上げるものと考え、世界に向けて表現し続け、成功に向けて邁進している者である。 思春期の子どもに対して「タレント」のラベルをつけてその子の知性や才能を褒めることは、子どもを固定思考に陥らせてしまう危険性がある。 |
Dweck, 2009 |
家庭の支援 | スポーツの熟達の分野における家族の研究は、主に保護者を対象に行われてきた。 トップアスリートは第二子以降の者が多く、その兄弟は運動経験が豊富で競技でもプレエリートやエリートのレベルまで到達している傾向がある。 |
Hopwoodら, 2015 |
家族、学校、地域との連携等により、ユース年代のスポーツ参加に正の影響を与える。 | Turnnidgeら, 2014 | |
特に成長期の子どものスポーツ経験に影響を与える相対年齢効果等の社会的不平等を軽減・排除するためには、政策、組織、家族も含めた実践者の直接的な介入が必要である。 | Cobleyら, 2009 | |
関係団体との連携 | コーチ、保護者、中央競技団体の3者の連携がアスリート育成では重要である。 | Pankhurstら, 2013 |