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スポーツ科学

自分に適したクーリングダウンやリカバリー手段は?
パスウェイ科学チーム・ハイパフォーマンススポーツセンター

クーリングダウンとは

ウォーミングアップとクーリングダウンは、多くのアスリートが日常的に実践しています。クーリングダウンとは、アスリートがトレーニングや競技大会後の1時間以内に行う運動(軽いジョギングや静的なストレッチなど)のことで、リカバリー手段の一つです。実はクーリングダウンは、翌日の競技パフォーマンスに良い影響を与えるという科学的な根拠が少なく、注意が必要な部分もあります。

このコラムでは、クーリングダウンが競技のパフォーマンスや身体に対して、どのような効果があるのか科学的な根拠をしっかり確認して、自分がどのような目的でクーリングダウンを行うか改めて考えてみましょう。また、他のリカバリー手段(睡眠、食事、交代浴など)と併用することで、効果が高まる可能性があると考えられているため、自分に適した手段を考えてみましょう。

競技パフォーマンスへの影響

アクティブ(動的な) ・クーリングダウン(軽いジョギングなど)を行っても、翌日のトレーニングや競技大会でのパフォーマンスに大きく影響することはないといわれています。逆に、次のトレーニングや競技大会までの間隔が4時間以内の場合には、競技パフォーマンスに悪い影響が出てしまう可能性があるので注意が必要です。また、傷害予防にはつながらないといわれています。

一方で、アクティブ(動的な)・クーリングダウンを長期的に継続していくと疲労からの回復(身体の適応反応)を高める可能性があることが分かってきています。

クーリングダウンの実践的提言

重要なことは、クーリングダウンをリカバリー手段の一つとして捉えることです。競技パフォーマンスや疲労からの回復(身体の適応反応)に良い影響を与えるためには、トレーニング内容(時期、運動の負荷や量)に見合ったリカバリー手段を選択して準備しておくことが重要です。複数のリカバリー手段(例:クーリングダウン、睡眠、心理的スキルなど)をトレーニング内容に合わせて適切に組み込むことが重要です。どんな時期(運動の負荷や量など)に、どんなタイミング(場面、状況など)で、どんなリカバリー手段を用意すれば良いかを自分なりに試行錯誤して、最終的に自分に適したクーリングダウンやリカバリー手段を取捨選択していきましょう。以下にいくつか例を示しておきます。

  1. 例①:基礎体力を高める(身体にたくさん負荷をかける)時期のトレーニング(例:持久走、筋力トレーニング)後には、クーリングダウン(軽いジョギングや静的なストレッチなど)とアイシングを併用してみる
  2. 例②:日々のトレーニング後のルーティン(ある決まった動作や取り組み)として複数のリカバリー手段(クーリングダウン、食事、睡眠など)を併用してみる
  3. 例③:競技特性(個人競技と団体競技)に合わせて、動機づけや自信などを高める(心理的スキル)時期を設けてみる

リカバリー手段の一つである「アクティブ・クーリングダウン」の実践

アクティブ(動的な)・クーリングダウン(軽いジョギングなど)は、基本的に運動やトレーニング時に使用した筋肉と同じ筋肉を使って実施しましょう。具体的な方法は、それぞれアスリート自身の好みや信念により異なることが分かっているため、運動方法、負荷(きつさ)、時間など、以下のポイントを踏まえて自分なりに工夫して実践しましょう。

  1. (1)血流量を増やすためには、低~中程度のきつさで行う動的な運動が必要であること
  2. (2)次のトレーニングの筋損傷と遅発性筋肉痛を防ぐためにも低~中程度のきつさに留めること
  3. (3)次のトレーニングに疲労が残らないようにすること
  4. (4)筋収縮のエネルギー源である筋グリコーゲン再合成を妨げる可能性があるため活動時間を約30分以内にすること

【参考資料】

アクティブ・クーリングダウンによる生理学的な(身体に対する)影響について、以下のことが分かっています。これらの科学的な根拠も踏まえた上で、上記の(1)~(4)のポイントに注意して実践しましょう。

生理学的な影響(身体に対して必ずしも好影響とはいえない科学的な根拠)

※〇効果あり、△不明、×効果なし

  • 血中乳酸の除去を促進する(〇)が、必ずしも乳酸が筋組織から除去されるわけではない(×)
  • 運動後の免疫細胞数の低下を防止できるが、これにより感染症や疾病の減少につながるかは分かっていない(△)
  • 運動後の心血管系・呼吸器系の回復を促進する(〇)が、重篤な症状(失神や心血管系の合併症)を減少させるかは分かっていない(△)
  • 遅発性筋肉痛の軽減や筋損傷の回復を促進することはない(×)
  • 関節可動域は改善せずに、筋肉や腱の硬さも軽減しない(×)
  • 筋収縮のエネルギー源となる筋グリコーゲンの再合成を妨げて悪影響となる可能性がある(×)
  • 回復を促す内分泌系ホルモンの分泌を促進する可能性があるが、学術的(統計的)には明らかでない(△)
  • 発汗量は増えるが深部体温は下がらない(×)

このように、これまでの生理学的な研究からは、アクティブ・クーリングダウンが疲労回復に極めて有効であるとはいえないようです。しかし、多くのアスリートは、アクティブ(動的な)・クーリングダウンの方がパッシブ(静的な)・クーリングダウン(静的ストレッチングなど)よりも有益であると認識しており、他のリカバリー手段と併用して実践しています。

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