当サイトでは、利用測定やトラフィック分析を目的として、クッキー(Cookie)を利用しています。
当サイトの閲覧を続けた場合、クッキーの利用に同意いただいたことになります。
詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
ウォーミングアップはその名の通り「身体を温める」運動で、試合前やトレーニング前の準備として欠かせない手段です。ウォーミングアップの効果的な方法やタイミングを理解すればパフォーマンスの向上やケガの予防に繋がります。様々な方法を知り、自分に合った方法を確立しましょう。
ウォーミングアップの効果は主に筋肉の温度(筋温)が上がることによって起こります。一般にウォーミングアップの効果には次のようなものがあります:
ストレッチは、ウォーミングアップの代表的な手段の一つです。関節可動域の限界近くで筋肉や腱をゆっくり引き伸ばすストレッチは、「スタティック(静的)ストレッチ」と呼ばれているのに対し、狙いとする筋肉の拮抗筋(反対側の筋肉)を意識的に収縮させて関節の曲げ伸ばしや回旋などを行うストレッチ(例:ツイストランジ)を「ダイナミック(動的)ストレッチ」と呼びます。
スタティックストレッチは、パワー、スプリント、ジャンプといった瞬発的な運動能力を下げることがあります。一方、ダイナミックストレッチは、瞬発的な運動能力を向上させる事が分かっています。そのため、ウォーミングアップにはダイナミックストレッチが適しています。
ダイナミックストレッチは、できるだけ早いテンポで行うのが効果的である、ということが分かっています。長時間に渡って行うとその効果が薄れてしまいますので、やりすぎには注意しましょう。
より効果的なウォーミングアップを実施するには、競技の実際の動きに合わせた動作を採り入れることがおすすめです。一部の競技の一つの方法ですが、ウォーミングアップの実例として次のようなものがあります:
競技種目 | ウォーミングアップの実例 | |
---|---|---|
陸上競技短距離 | 5本以上の本番ペース近くのスプリント | |
自転車競技 | 短時間・低強度の有酸素性サイクル+短時間の全力でのサイクルx1回 | |
競泳 | 500m~1200mのスイム+本番ペースの短距離スイム | |
サッカー、ラグビー | 15分以内のミニゲーム(可能な限り試合直前に行う) | |
ウォーミングアップの手段としてはストレッチの以外にも、ランニング、サイクリング、専門的運動が挙げられます。ウォーミングアップの順番としては、始めに身体を温めるためのランニングを行うのがおすすめです。短い時間で大きな力を発揮する競技(例:短距離走)の場合は、軽いランニングを長めに、長時間の運動をする競技(例:自転車競技ロード)の場合は、軽い運動から始めて少しだけ息が上がるまで行いましょう。その後ダイナミックストレッチを行い、ウォーミングアップの終盤には競技の専門的な動作を入れましょう。
競泳自由形の選手を対象に、ウォーミングアップを競技の10分前に行った時と20分前に行った時のパフォーマンスを比較した結果、10分前に行った方が競泳のパフォーマンスが向上した、という研究報告があります。また、ダイナミックストレッチによってパフォーマンスが向上する持続時間は5分程度、とする研究報告もあります。ウォーミングアップはなるべくトレーニングや試合に近い時間に行うようにしましょう。
また、1日に複数の試合がある場合は、毎試合前にウォーミングアップを行うようにしましょう。試合と試合の間に筋温が下がってしまうとパフォーマンスが低下することがわかっています。試合中にハーフタイムなどの休憩時間がある場合も同様で、休憩中も軽く身体を動かすように心がけましょう。
ウォーミングアップと試合の間隔が予定外に空いてしまった場合には、スポーツウェア(ウィンドブレーカー)を活用するのが良いでしょう。ウォーミングアップのあと、外部から筋肉を温めるウェアを着用することで、筋温の低下が抑えられることがわかっています。
高強度の準備運動を行うと、「活動後増強(Post-activation potentiation:PAP)」という現象が起こり、筋肉の出力が一時的に増加します。例えば、運動前に高強度のスクワットを行うことによって陸上短距離走のパフォーマンスが向上したこと、が報告されています。
活動後増強を引き起こす準備運動としては、限界近く(最大筋力の90%前後の重量)でのスクワットやパワークリーンなどが挙げられますが、これらの運動は正しいフォームが身に付いていないとケガに繋がる恐れがあるので、慣れていない場合は避けましょう。ケガの可能性が低い運動としては、最大筋力の等尺性(関節の角度を変えずに行う)運動でも活動後増強が生じることが分かっています。
ただし、疲労については十分に注意する必要があります。準備運動の直後では疲労が残っているため、パフォーマンスが一時的に低下します。準備運動を行ってから3分~10分ほど経過すると、疲労の回復に伴い活動後増強の効果が現れるので、活動後増強を狙った準備運動は、試合開始時間から逆算して実施しましょう。
ストレッチ、ラン、サイクルや高強度運動の他にも、例えば専用のマシンを使った全身振動トレーニング(Vibration training)というものがあります。全身振動トレーニングは、筋力やジャンプ力の向上に有効であることが分かっています。しかし、神経系の活動レベルについて詳しいことがまだ分かっていないため、全身振動トレーニングがウォーミングアップに有用か、はまだ明らかではありません。
自分で様々な方法を調べてみて、ウォーミングアップに採り入れるかどうかをコーチと相談しながら決めましょう。
ウォーミングアップをうまく活用するためには、軽く汗をかく程度まで筋肉を温めることを意識して強度と量を調整し、方法や、順番、タイミングを考えて行うことが重要です。やりすぎには注意が必要です。
ウォーミングアップは、競技種目によって最適な方法が異なります。コーチと相談し、情報収集や試行錯誤をしながら自分に合ったウォーミングアップを見つけて、ベストな状態で日々のトレーニングや本番の試合に臨みましょう。