スポーツ科学

「風邪知らずで最高のパフォーマンス発揮を」
国立スポーツ科学センター スポーツ研究部 清水和弘

アスリートは感染症にかかりやすい?

アスリートは風邪などの感染症にかかりやすく、オリンピックなどの重要な大会で風邪や胃腸炎にかかってしまう人もいます。その理由としてアスリートは免疫力が低下しやすいことや多くの人と接触する機会があることが関係しています。

感染症の影響

  • 体調悪化・パフォーマンス低下
  • ほかの選手やスタッフに感染してチーム内で蔓延
  • 代表選抜の辞退、チームからの離脱
  • 風邪薬による“うっかり”ドーピング(体調悪化でついつい手元の薬を飲んでしまう)。

*少しでも体調が悪いと思ったら、すぐチームスタッフに相談しましょう。

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免疫力が低下しやすい原因

トレーニング
免疫力は高強度運動で低下し、長時間になるほど回復が遅くなります。さらに高強度・長時間の運動が毎日続くと安静時でも免疫力が徐々に低下します4)。また持久性トレーニングはウェイトトレーニングよりも免疫力を下げやすいと考えられています。
長距離移動
海外など長距離の航空機移動で免疫力が低下します。機内は湿度や室温が低いのでマスクや水分補給で粘膜の乾きを防ぎましょう。
減量
脱水を伴う減量で免疫力が低下します。減量期間が短くなるほど免疫力が低下しやすいので1ヶ月ほどの緩慢な減量がすすめられます。
月経異常
女性ホルモンの低下で免疫力が低下します。無月経や稀発月経の選手は免疫力が低く、感染症にかかりやすい可能性があります。
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セルフチェック!免疫低下のサイン

  • 休養しても、いつも以上に疲れが残っているときは、バリア機能が低下しています
  • すぐに寝付けない、目覚めてもなかなか起きられないときは、バリア機能が低下しています
  • 水分補給をしても口の渇きが続くときは、バリア機能が低下しています。運動後の体重減少が2%以上あったときは特に注意。
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感染しない・広めないための対策

① 病原体を体に入れない
  • 目・鼻・口をさわらない(手についた病原体を粘膜につけない)
  • 他者との接触・握手後もさわらないように注意
  • 不用意に物をさわらない
  • 人混みを避ける
  • タオルの共用・回し飲みの禁止(チームでも家庭でも注意)
  • こまめな“手洗い”(特に指先・爪の間)
  • こまめな消毒(アルコールや次亜塩素酸ナトリウム)
  • こまめな“うがい”(口を清浄に保つ、潤う)
  • マスクの着用(粘膜の保温・保湿、病原体の飛散防止、鼻や口を触れにくくする)
  • 水分補給(バリア機能を保つために口を乾燥させない)
  • 部屋の加湿(湿度50〜60%ほど。加湿器がなければ、濡れタオルを干すなど)
  • くしゃみ・咳をするときは周囲の人から顔をそむける、できるだけ離れる、ティッシュや袖で口を覆う、手を洗う。
② 免疫力のリカバリー
● 運動メニューの調整
  • 運動強度や継続時間を減らすと免疫力の低下は抑えられます
  • 高強度でも短時間にすれば、免疫力は低下しますが、回復は早まります
  • 持久性運動からウェイトに変更する手もあり
● マッサージ
  • 多少痛くても選手が受け入れるような全身性のマッサージ(30〜40分程度)
  • 心地よいと感じる刺激
● 鍼(はり)治療
  • 鍼通電刺激(2Hz・30分間の鍼通電、合谷、孔最、足三里)
  • 置鍼・雀啄(30分間、頬車へ)
③ 免疫低下に備える
*バランスの良い食事が基本
● ビタミンAとビタミンD:免疫調節に関わり、不足に気をつける
  • ビタミンAが多く含まれる食品:レバー、ウナギ、卵、牛乳、、チーズ、ニンジンなど
  • ビタミンDが多く含まれる食品:サケ、イワシ、サンマ、卵、キクラゲ、マイタケなど
● 乳酸菌(乳酸菌飲料やヨーグルトなど)
  • 続けて摂取することで免疫力が高まる
  • 最大限の効果を得るには1ヶ月は続ける

少しでも感染のリスクを減らすために、① どんな時に免疫力が低下しやすいかを念頭におき、② 免疫低下のサインを感じた時に、③ 感染対策を実践する。
できるものから取り入れましょう。

※第18回アジア競技大会(2018年/ジャカルタ・パレンバン)日本選手団の感染対策のために作成された「感染症を防ぐ免疫コンディショニングガイド」を再編集したものである。

その他、各競技団体・アスリートの皆様にご活用いただけるような各種情報がハイパフォーマンススポーツセンターのウェブサイト外部サイトへ移動しますに掲載されております。合わせてご参照ください。