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スポーツ科学

「ユースアスリートの筋力トレーニング」
パスウェイ科学チーム・ハイパフォーマンススポーツセンター

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なぜ筋力トレーニングか

 スポーツにおける競技パフォーマンスと運動能力は密接な関係にありますが、技術トレーニングだけでは運動能力を十分に高めることができません。運動能力のうち、特に素早い動作を行う能力、大きな力を発揮する能力や、またそれらを維持する能力(筋持久力)の向上に、筋力(ウエイト)トレーニング(ダンベル、バーベル、マシンなどで負荷をかけて行うトレーニング)が有効です。

筋力トレーニングの効果を知ろう

 筋力トレーニングの研究では、様々な効果が報告されています。特に、海外では専門家の監視・指導の下、ユースアスリートの筋力トレーニングが推奨されています。一般的に筋力トレーニングの効果には次のようなものがあります:

  • 発揮できる力やパワー(力×スピード)が大きくなる
  • 瞬発力が向上する(例:ジャンプ力が上がる)
  • 筋力の発揮を維持する力(筋持久力)が向上する
  • 筋肉を調整する能力が向上する
  • ケガのリスクが軽減される
  • 精神面(例:自己効力感。つまり「できる」という自信)が高まる

いつから筋力トレーニングを始めるか考えよう

 筋力トレーニングを開始する年齢が早ければ早いほど、それだけ筋力トレーニングの経験年数が長くなるという利点があります。経験年数が長くなるほど筋力トレーニングの基本動作が上達し、応用の幅も広がります。また、成長期前の子どもにおいても筋力トレーニングが筋力向上に有効であることがわかっています。まずは筋力トレーニングの基本動作を習得することに重点を置きましょう。

筋力トレーニングすると筋肉モリモリになる?

 筋力トレーニングで筋肉が大きくなり(筋肥大)、身体が大きく変わると、筋肉が過発達して競技パフォーマンスに悪影響を及ぼすのではないか、と心配になるかもしれません。筋力トレーニングを実施すると、筋肉が大きくなる前に、まず筋肉がうまく使えるようになる「神経系の適応」が起こります。そして、ユース年代の筋力トレーニングによる効果は、主に「神経系の適応」によって生じることが分かっています。つまり、発育発達の段階にあるユース年代の筋力トレーニングは、身体に大きな変化が起こることなく運動能力が向上します。

 なお、成長期後の筋力トレーニングにおいては、神経系の適応を目的として高重量(8回以下の挙上で限界がくる重さ)、筋肥大を目的として中・高重量(8~15回程度の挙上で限界がくる重さ)を用いる場合が多いです。成長期前や成長期中の筋力トレーニングにおいて筋肥大を狙う必要はなく、また高重量を扱わなくても神経系の適応による筋力の増加が起こるため、高重量を扱うことにこだわる必要はありません。

 一般的に、成長期前は自体重トレーニング、成長期中は低重量フリーウエイトトレーニング(例:バーベルを使う場合は、バーベルプレートを付けずに行う)、成長期後から徐々に重量を扱うフリーウエイトトレーニングに慣れていくのがおすすめです。

筋力トレーニングは危険?背が伸びなくなる?

 筋力トレーニングの疲労が十分に回復していないとケガに繋がる可能性もあります。そのため、「子どもには危険」、「成長を妨げる」などの理由でユースアスリートの筋力トレーニングが避けられることが多いですが、実はどちらの理由にも科学的な根拠はありません。筋力トレーニングは適切な(関節に無理な負担がかからない、目的に合った)フォームや使用重量の設定に関する知識を十分にもっており、さらに筋力トレーニングの経験豊富な専門家の指導・監督の下で行えば、ケガのリスクが低いことが示されています。セット数やセット間インターバルの長さなども合わせて、安全で効果的なトレーニングを指導してもらうようにしましょう。

ユースアスリートの筋力トレーニングにおける実践的提言

 専門家や指導者の監視の下、関節に無理な負担がかからず目的に合ったフォーム・重量で筋力トレーニングを実施することで、大きなリスクを冒すことなくユースアスリートの運動能力を向上させることができます。また、筋力トレーニングを実施したら、必ず十分な栄養(食事)と休養(睡眠)をセットでとるようにしましょう。ユース年代はあまり競技特有の専門的な運動能力にこだわらず、バランスよく運動能力の向上を目指しましょう。