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アスリートライフスタイル

「アスリートとソーシャルメディア(導入編)」上田大介(TRENSYS)

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アスリートのみなさんへ
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競技パフォーマンスに影響を与えるモノについて

キックを蹴る前に顔の前で忍者のようなポーズをとる仕草。みなさんも一度は真似してみませんでしたか? ラグビー日本代表の五郎丸選手はそのポーズを「ルーティン」という言葉で表現しました。 筆者は幼い頃から野球をやっており、打席に入るとバットをピッチャーに向けて立つ動作をよく真似していました。誰の真似だかわかりますか?そう、メジャーリーグで活躍するイチロー選手です。実はイチロー選手も特徴的な「ルーティン」を行なっているアスリートの一人です。試合前、競技に入る前の一定のルール、法則、習慣のようなもの。これら一連の動作は心を落ち着かせるため、精神を統一するためなど、様々な表現の方法はありますが、総じて「競技パフォーマンスを向上」させる目的で取り入れられています。そして、それらの「ルーティン」は競技上におけるものだけではなく、競技外(私生活)においても存在していることをみなさんはご存知ですか?ちなみに五郎丸選手は「日記をつける」ことだそうです。日記にはその日の出来事をただ書き残すだけで頭の中が整理され、過度な緊張状態を和らげてくれる効果があったそうです。実はここに「アスリートとソーシャルメディア」でみなさんにお伝えしたいもう一つの大切なモノがあります。

私生活の中にも競技パフォーマンスにつながるモノがある

ここで一つ、みなさんも考えてみてください。五郎丸選手が私生活の中に取り入れていた日記のように、一見、競技とは関係のないように見える場所において、意識していることはありませんか?例えば「食事」を例にあげると、食事は体をつくるものだから、オンでもオフでも常に栄養には気をつけている。特に試合前日に食べる勝負メシはこれだ!のように。さらに「睡眠」を例にあげると、試合の3日前からスタート時間から逆算して就寝時間と起床時間を決めている。ゴールデンタイムはこれだ!のように、意外とみなさんも競技外(私生活)においても常に気をつけていることがあると思います。

無意識の内に接する「情報」との付き合い方を考える

では、「情報」はいかがでしょうか?競技上に必要な情報としてライバルの特徴など様々ありますが、ここでは競技外の情報を考えてみてください。おおよそ競技外の情報は無意識の内に入ってくることがあります。いくつか例をあげてみます。夜中にテレビをつけてニュースを見ていると世界で起こっていることを知って悲しい気分になった。そのまま眠って怖い夢を見た。反対に、新しく公開される映画やドラマの予告を見てワクワクしてなかなか眠れなかった。など、そして両者ともその結果は翌朝に現れ、1日のスタートが出遅れてしまった。そんなことありませんでしたか?世の中に溢れる様々な情報を無意識の内に取り入れ、みなさんの感情や精神が乱れてしまった経験はありませんでしたか?今回お話する「ソーシャルメディア」について、これをとても簡単に説明すると、ものすごい量の情報が飛び交うものです。InstagramやTwitter、Facebook、LINEなどに代表されるSNSを中心に「いまなにしてる?」の形で自分がしていること、友達がしていること、こう思ってる、こんなことがあった、など、利用者が主観的にそれぞれの体験や経験、シーンを切り取り、自分の言葉で表現する情報が飛び交う場所です。その情報は言葉や写真、動画で伝わりますが、テレビや新聞、ラジオの既存のメディアのように表現の仕方にルールはありません。ここでみなさんに考えていただきたいのは、では「その結果、何が起こるのか?」ということです。ソーシャルメディアはとても便利です。テレビや新聞が報じる前、鉄道会社が電車の遅延を発表する前に、実際にその現場にいた人、ソーシャルメディアの利用者によってその状況がシェアされ、瞬く間にその情報を求めている人たちに伝わります。その環境はインターネットによって支えられているため災害に強く東日本大震災や熊本地震の際にも電線が切れて電話もテレビも使えない、状況の中、バッテーリーで動き、無線回線でつながっているスマートフォンは多くの人の命を救い、勇気を与えたことは言うまでもありません。ですが、同時に、多くの人の命を危険にさらし、中には命を奪ってしまったケースがあるのもご存知ですか?青森県の中学生はクラスの中でソーシャルメディアを使った言葉による集団いじめにあっていました。これは学校内だけでなく、放課後もインターネットを通じてつづき、「もう耐えられません」と書き残し自ら命を絶ちました。まず、みなさんが何気なく使っているソーシャルメディア、これは自分に力をくれるものでもありますが、同時に力を奪って行くものであることを覚えておいていただきたいです。

自分にとってどういう存在なのかを明確に考える

登山家の方はこう言います。ヒマラヤ登頂、極限の状況の中で遠く日本からソーシャルメディアを通じて届く一つ一つのメッセージを聞き、自分の中に「諦めない」という力が出てきた。ベースキャンプの仲間が読み上げてくれた言葉が耳から入り、脳はその言葉を処理し、手足に力をもたらしたと言っています。一方でプロ野球選手の方はこう言います。ファンの方から届いたメッセージに「愕然とした」勝ってはいけなかったのか。。。と。競技者である限り、勝利を目指すことはとても大切。それを、たった一人の心ないメッセージを読み揺らいでしまった。自分はその人の言葉を流すことができなかったと。登山家の方は力に変えることができ、プロ野球選手の方は力に変えることができなかった。この違いを自分と照らし合わせて、自分はどう使うかを是非考えていただきたい。ソーシャルメディアの中には様々な人がいます。賞賛する人もいれば批判する人もいる。力を与えてくれる人もいれば力を奪って行く人もいます。何が起こっても自分の力に変えられる人は利用することをお勧めします。しかし、まだ自分に向けて発された言葉を受け流すことができない方は利用されないことをお勧めします。

明日の自分をつくっているのは今日の自分

シドニー五輪金メダリストであり女子マラソンの元世界記録保持者の高橋尚子さんは言います。トップアスリートに必要なことは「準備」だと。スタートラインに立った時、横一線に並んだライバルを見て、「自分が一番準備をしてきた、不安は一つもない」という環境をつくることが大切だと言いました。これは日々のトレーニングはもちろん、自分が使っているソーシャルメディアを経由して恥ずかしい情報が誰かに見つかってしまうんじゃないか。誰かが自分の情報を出してしまうんじゃないか、といった不安の排除に至るまで、人ととして準備ができているかという意味です。皆さんのソーシャルメディア利用もすでに明日の自分につながっているということ、そして、明日、将来、夢の舞台、スタートラインに立つことができた自分は、今の自分を振り返り「ありがとう、ちゃんと準備してくれたから、不安はないよ」と言ってくれるように。これまでの習慣、これからの習慣を自分のために考えましょう。

アスリートライフスタイルチェックポイント

  • 1.競技パフォーマンスに影響を与えるものは競技上にも競技外(私生活)にもある
  • 2.ソーシャルメディアによってもたらされる情報は良いものも悪いものもある
  • 3.自分にとって強みになるのか弱みになるのか自分で考え判断する

参考文献
講談社:週刊現代「五郎丸歩 独占インタビュー!ラグビーW杯、「恐怖心」と戦った4年間〜そのすべてを明かす」 日本経済新聞社:ITOro「デジタルで瞬時に拡散、LINEいじめはなぜ10代を追い詰めるのか」 JOC:The Building up Team Japan 2016 for Pyeongchang「ちょっとだけ頑張る 勝つためのアドバイス(高橋尚子)」


《筆者プロフィール》
上田 大介 経歴:1982年12月、京都市生まれ。広告制作会社を経て2009年1月TRENSYSを創業。ウェブマーケティングに取り組み、企業の宣伝・広告・販促・広報のディレクションを担当。2012年より研修講師としてプロスポーツ選手を対象にソーシャルメディアがもたらす影響やリスク・効果的な活用法を伝える活動を行っています。