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スポーツ科学

「パフォーマンスに差を生み出す水分補給作戦」
パスウェイ科学チーム・ハイパフォーマンススポーツセンター

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パフォーマンスを維持するために

 私たちの身体のおよそ60%を水分が占めています。筋肉量が多く、脂肪量の少ないアスリートの場合はさらにその割合が高くなります。
 試合やトレーニング等、運動中は主に発汗で身体の水分が失われますが、これによる体重の減少率が体重の2%(例:体重が60kgの場合、1.2kg)を超えると、集中力の低下、スキルレベルの低下、心拍数や体温の過度な上昇等が起こります。したがって、パフォーマンスを維持するためには、体重の減少率が体重の1%以内に収まるよう、十分な水分補給を行う必要があります。また、汗には水分だけでなく塩分等も含まれているため、「どのくらい飲むか」だけでなく、「何を飲むか」も考えて選択しなければいけません。
 発汗によって失う水分の量は、個人の体質や体格、運動への適応度、運動する環境(例:気温、湿度)、運動の強度、運動時の服装等によって様々です。したがって「これくらい補給すれば良い」という水分の量はなく、状況に応じて必要な水分量を個別に把握する方法を知っておくことが、より良いパフォーマンスの発揮につながります。

まずは、自分がどのくらい飲めばいいかを知ろう

 水分補給のペースは、運動開始から少しずつ常に行う(例:1時間あたり3~4回、1回あたり200~300ml程度)のが理想ですが、競技のルールや休憩のタイミング等、置かれた状況の中で必要な量を補給することが最も重要です。
 必要な水分量は、運動する環境や運動の強度等によって異なるため、「様々な状況に対して自分に必要な水分を事前に知っておくことが正しい量の水分補給を行うコツ」です。運動中だけでなく、運動前にも200~600mlの水分を摂るようにしましょう。また、運動後もおよそ4~6時間は汗や尿として水分を失うため、運動中に失った水分の150%ほどを目安に補給すると良いでしょう(例:水分が1000ml失われたら1500ml摂る)。
 一方で、水分の摂り過ぎにも注意が必要です。塩分の少ない水分を必要以上に大量に摂ると、体液が薄まってしまい、脱水状態の場合と同様、疲労感等の症状が出ます。特に涼しい場所での強度の低い運動などは、他の環境に比べて発汗量が少なくなるため、水分を摂り過ぎてしまうことがあります。
 水分を過不足なく補給するためには、自分に必要な水分量を事前に知っておくのが賢い手段の一つです。運動前後の体重を計測することで、簡単な計算式から1時間あたりに必要な水分量を求めることができます(図1)。この計算式の結果を様々な運動強度や気温等に対してあらかじめ知っておくことで、その日のトレーニングや試合に対して自分に最適な水分量を補給するためのプランを立てることができるようになります。

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図1.自分に必要な水分量を知るための計算式(mysportscience(2017)から改変)

次に、何を飲めばいいか考えよう

 運動中の飲料は、冷たく(15℃以下)、口当たりが良く、塩分を含むものが身体に吸収されやすいです。特に、多量の水分を失い、素早く水分を補給する必要がある場合は、塩分を含んだ水分を摂るのが良いでしょう。
 市販のスポーツドリンクには塩分が含まれており、準備がしやすく、さらにエネルギー源となる糖分も含まれているのでオススメです。ジュースのような飲料は糖分が多すぎるため、胃もたれ等を引き起こすことがあり、運動中には適しません。100mlあたりの炭水化物の含有量が4~8g程度のものを選びましょう。

最後に、十分に水分補給できているか確かめよう

 体内の水分が不足すると喉が渇きます。そのため、喉が渇いたら水分補給をするよう心がけている人も多いのではないでしょうか。しかし、試合やトレーニングに集中していると、自分の喉の渇きに気付くタイミングは遅くなってしまいます。実際、水分補給のプランを立てずに喉の渇きを自覚した時点で水分補給をした場合、必要な水分量のおよそ半分ほどしか補給されていないという研究報告があります。また、4000~5000mlの脱水をしていたにも関わらず喉の渇きを感じなかったという事例も報告されています。30分以上の運動を実施する際にはあらかじめ水分補給のプランを立てておくのが良いでしょう。
 また、自分の脱水状態を簡単に確認する方法があります。トイレに行ったときに、自分の尿の色を確認してみましょう。尿の色が薄いときは十分な水分補給ができており、逆に尿の色が濃いときは身体の水分が不足しているサインです(図2)。図2の尿カラーチャートが「ゴールデンオレンジ」よりも尿の色が濃かった場合は、速やかに水分を補給しましょう。

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図2.脱水状態を知るための尿カラーチャート(IOC(2016)から改変)

効果的な水分補給を行うための実践的提言

 パフォーマンスを維持するためには、運動後の体重が、運動前の体重に比べて2%以上減らないようにすることが重要です。運動前に200~600mlの水分を摂る等、水分補給を十分に行ってから運動を開始し、運動中もなるべくこまめに水分を摂るように心掛けましょう。また、日頃から食事や補食を摂る際には意識して水分を摂るようにしましょう。
 様々な運動強度や運動環境に対して自分に必要な水分量を知っておき、運動の強度や環境に応じたプランを立てるのが適切な量の水分補給を行うコツです。また、トイレに行った際には自分の尿の色を観察し、水分が足りているか常に確かめる習慣をつけましょう。