アスリート育成パスウェイとは?

皆さんはアスリートの育成パスウェイと聞いて、どんなイメージを持ちますか?

もしかしたら、けもの道のように先が分からないけれど、生き残るために自ら切り拓いていくパスウェイのイメージなのか、首都圏の路線図ように多くの駅が複雑に絡むパスウェイのイメージなのか、人によってイメージするアスリート育成パスウェイはに様々なイメージを持たれるだと思います。

独立行政法人 日本スポーツ振興センター(JAPAN SPORT COUNCIL:JSC)では、アスリート育成パスウェイを「競技開始からメダル獲得の潜在力を有するアスリート(メダルポテンシャルアスリート)までの育成の道筋」と定義をしています。

アスリート育成パスウェイは、まず夢を見ることから始まります。
しかし、その道のりは、平坦ではありません。…

仮説モデルの図

我が国におけるアスリート育成パスウェイ仮説モデル
※MPA…メダルポテンシャルアスリートのこと

アスリートとして
「めざす」、「きめる」、「ねらう」、そして「かえる」

図のように「メダル獲得をめざす」のと「メダル獲得をねらう」のとでは、メダル獲得という目標を達成するまでに、長い道のりと感じるでしょう。具体的には、「めざす」より「ねらう」方が、より目標まで近く、現実的です。

しかし、「ねらう」ためには、まず初めに決めておくべきことがたくさんあります。例えば、「何年後にどの種目でメダルをねらうか」、「誰がコーチでどこを拠点とするか」などの段階的な具体の目標設定が必要です。「めざす」と「ねらう」の間の「きめる」段階を踏まなければ、夢の実現に近づくことは難しいのです。

また、時には種目を「かえる」こともあるでしょう。特に、競技人口の多い人気スポーツでは、年齢を重ねれば重ねるほど、自分の実力を痛感することがあるかもしれません。その時に、別のスポーツでメダル獲得をねらうため、今までやってきたスポーツや種目から別の種目へ、勇気を持って「かえる」決断ができるかが問われます。

メダル獲得までの段階の図

アスリート育成パスウェイの代表的なパターン

アスリート育成パスウェイの代表的な道のりとして、図のようなピラミッド型、タワー型、つぼ型があります。
この図のように、自分の選択したスポーツがどのパターンのアスリート育成パスウェイなのかをまず知ることが大切です。

競技人口の多い裾野から、下から上へパフォーマンスレベルが高くなるにつれてふるいにかけられていくピラミッド型のアスリート育成パスウェイが理想です。 しかし、競技人口の少ないスポーツでは、裾野のアスリートがそのままトップに上り詰めるタワー型や、中学期と高校期の部活動などを通してのみ競技人口が 増えるつぼ型のアスリート育成パスウェイあります。自分の選択したスポーツがどのパターンのアスリート育成パスウェイなのかをまず知ることが大切です。

アスリート育成パスウェイの典型的なパターンの図

ピラミッド型 タワー型 つぼ型
ピラミッド型のイラスト タワー型のイラスト つぼ型のイラスト
競技人口の多い裾野から、下から上へパフォーマンスレベルが高くなるにつれてふるいにかけられていく。 競技人口の少ないスポーツでは、裾野のアスリートがそのままトップに上り詰める。 中学期と高校期の部活動などを通してのみ競技人口が増える。

アスリート育成パスウェイの軌跡
~ 日本人オリンピック選手の調査から ~

JSCのデュアルキャリア*調査(2014)によると、日本人オリンピック選手263名の育成パスウェイを見ると、下のジュニア世代から上のシニア世代まで直線的に育成パスウェイの段階を常に上へ駆け上がるパターン(直線系)は15%しかありません。育成パスウェイの段階を上がったり下がったりするパターン(混成系下降型)が43%と一番多いです。つまり、オリンピックに出場するアスリートの多くは、順調にトップまで登りつめるというよりは、アスリート育成パスウェイの中でアップダウンを繰り返しながらトップアスリートへ上り詰めるのです。

*デュアルキャリアとは、「人生のキャリア」と「アスリートのキャリア」という軸の二重性を指すものである。

軌跡のパターンの図

図.アスリート育成パスウェイの軌跡のパターン

アスリートの競技力向上に関わる要因

アスリートのパフォーマンスを引き上げるには、意図的なトレーニングや、パフォーマンスレベルに応じた大会への参加、家族の支援などの様々な促進要因があります。反対に、オーバートレーニング(過剰なトレーニング)や勝利至上主義(勝利のみを重要視する考え方)、オスグット病(膝の成長期痛)などの成長期特有の障害などは競技力向上を阻害する要因として挙げられます。それぞれの要因は、さらに用具や天候などの環境要因と、身体能力やモチベーションなどの個人要因に分けられます。環境要因は、自分自身でコントロールすることが難しいですが、個人要因は、アスリート自身がパフォーマンスを発揮するために最適な準備をできるかが問われます。
アスリート育成パスウェイ段階を上がるためには、個人によって運の影響もあるでしょう。しかし、最も重要なのは、いかに競技力向上に関わる阻害要因を予防し、促進要因を増やしていくかということです。

イラスト

一般的にアスリート育成パスウェイの過程は、8~10年かかると言われています。子どもの頃に抱いた夢をめざし、自分のスポーツの道のりをきめ、育成パスウェイの段階の中でアップダウンを繰り返しながら、メダル獲得をねらう段階までに至るのは、選ばれた一握りのアスリートのみです。私たちは単なるメダリストの輩出ではなく、見出されたスポーツタレントが、みんなの憧れるロールモデル(手本)となる真のチャンピオンへなれるよう、これからも支援していきます。

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