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アスリートライフスタイル

スペシャルインタビュー▼ 動画の内容をインタビュー記事でさらに詳しく!

スキージャンプ 高梨沙羅選手インタビュー

失敗から見えてくるものが大事。失敗、そして記録と分析の繰り返しがあらたな気づきにつながる。
高梨沙羅

“スキージャンプ・ワールドカップで歴代最多通算53勝(2017.2月現在)をあげ、2014年ソチオリンピック日本代表にも選出されたスキージャンプ・高梨沙羅選手。彼女がこれまで結果を残し続けてこられた理由は一体どこにあるのか?高梨沙羅選手の実践するアスリートライフスタイルに迫ります。

ジャンプが下手だった少女時代。先輩たちの姿が、世界で戦う原動力になった。

―これまで世界で戦っていくなかで、ハードルになったことやつらかったことはありましたか?

高梨中学2年生ではじめて遠征に連れて行っていただいたときは、海外で活躍する同世代の選手のパフォーマンスを見て「やはり私もまだまだだな」と思わされました。海外での生活自体に慣れていなかったのでとっさのハプニングにも対応できず、自分のメンタル面の未熟さにいらだちもありました。
それ以前にも、悩みはずっとありました。8歳のころからジャンプを始めて生活は学校終わりにジャンプ台に行って飛んでというくり返し。ジャンプは大好きだったのですが最初はなかなか上達せず、周りと比べても下から数えたほうが早いくらいだったんです。「どうやったら技術を伸ばしていけるのかな」って、ずっと考えていましたね。
そんなとき先輩たちのジャンプを見て、「自分もこういうかっこいい選手になりたい」という気持ちを持てたことが、つらいことがあってもがんばり続ける一番の原動力になったと思っています。

―試合にのぞむときに、心がけているのはどんなことですか?

高梨試合にのぞむときにはもう何も考えていなくて、ただ「今までやってきたことを全部ぶつける」という気持ちだけですね。それよりは練習の段階で、自分を無意識にベストの状態にもっていけるようなトレーニングをしておかないといけないと思っています。

練習で大事なのは、失敗をくり返すこと。今すべきことは、そこから見えてくる。

―日々のトレーニングをするときに、心がけていることはありますか?

高梨練習には失敗はつきものだと思いますが、どんな失敗にも必ず原因があると思うんです。それを絞り出せるだけ絞り出して、分析して、次の練習までにしっかり準備をするというのは、いつも心がけていますね。そういう意識があってこそ、内容の濃い練習になると思っています。
練習の様子はビデオに撮影していて、練習後にそれを見て反省点や対策を考えています。これを何度もくり返すうちに、「あ、こことここはつながるんだな」という気付きがやってくることがあるんです。そんなときは、すぐに書き出して記録するようにしています。記憶は早ければ早いほどいいですね。

失敗の記憶は持ち越さない。感覚まで記録することで細かな分析が可能になる。

―すぐに記録をしておくことで、鮮明な記憶がしっかり残って振り返りにも役立つということですか。具体的にはどんなことを書き留めているのですか?

高梨スキージャンプはアウトドア競技なので、その天候や風向きも大きく関係してきます。記録するときには、そういう情報やそのとき自分が感じた感覚も、細かく書いておくようにしています。これによって、その後の分析がしやすくなると思うんです。
分析で悩んだときには、コーチや周りで見ている方々にアドバイスをもらったりもしますね。そういう失敗のくり返しの中で、どんな状況のときもするべきことが見えるようになってきました。

―失敗をくり返すことで、見えてくることがあるんですね。

高梨そうです。特にワールドカップ期間中は、ジャンプ台が毎試合変わります。そうするとまた違う感覚で挑まなきゃいけない。環境の変化に左右されないためにも、失敗をくり返していろんな経験をしておくことが大事です。地道なトレーニングってやっぱり苦しいこともあると思うんですけど、それでもやっぱり結果を残すためには必要なことだと思いますね。

―毎日のトレーニングのなかで「どうしても気持ちが乗らない」というときや「時間がなくてメニューがこなせない」というときもあるかと思います。そんなときはどのように対処されていますか?

高梨やらなければいけないことは山積みなので、それを1つ1つやっていくということに尽きますね。トレーニングのメニューには1つ1つ意味があるので、どんなに時間がなくても省くことはできません。もちろんなかなかうまく進まないときもありますが、私はやろうと決めたことをできなかったとき罪悪感というか、「やってしまったな」っていう悔しい気持ちになるので、そういう落ち込みを避けるためにも、時間配分はきっちり守るようにしています。

ジャンプを極めたいからこそ、勉強も大事。勉学に励むことでうまれる可能性や気付きがある。

―スポーツ選手の方々は競技に強い学校に進学したり通信大学に進学したりする方が多いと聞いたのですが、インターナショナルスクールに進学されたというのは、どうしてなんでしょうか?

高梨一番の理由は、やはりスキージャンプに集中したいということですね。インターナショナルスクールだと何ヶ月かで集中して取れるんです。それだと勉強を最初に集中的にやって、その後の時間を競技に回せると思いました。語学を学べるので海外遠征のときに役立つと思ったのも、理由のひとつです。
その後は日本体育の最先端を行く専門の学校で学びたいという気持ちが強くなり、日本体育大学に進学することを決めました。大学ではジャンプ以外の競技もたくさん体験しました。ジャンプとはまったく違う競技に触れることで、よりジャンプへの理解が深まった気がしています。

―ほかの競技でのご経験がジャンプに役立つとは、おもしろいですね。

高梨ひとつの競技を極めていくとしても、やっぱりいろんな競技を体験しておいたほうがいいと思うんです。特にジャンプは野外競技なので、突然のアクシデントにもすぐ対応できないといけません。 そういう力を身につけるためにも、それまでは触れていなかった競技も少し練習してみたり、その競技をしている人にコツを聞いて学んだりするようにしています。
大学では、実技だけでなく理論も学びます。コーチング学の授業では、やはり今まで当たり前のようにしてきたことに「実はこういう理由でやってたんだ」っていう気付きがあって、おもしろかったですね。

―なるほど。そういう理論が分かると、トレーニングにも納得して取り組めそうですね。大学へのご進学は、やはり将来を見据えてという面もあるのでしょうか?

高梨そうですね。大学で学んだことはもちろん競技にも役立ちますが、人生を長い目で考えると、現役を退いたあとにも生かせるような知識も必要です。そういう視点で考えたときにも、学ぶことはプラスになるんじゃないかと思いました。

大事なのは競技が「好きだ」という気持ち。
それがあれば苦しい練習も乗り越えられ、いずれ結果へとつながる。

―これまでさまざまなメディアに出演されたり取材を受けたりという機会はたくさんあったと思いますが、そのときに気を付けられていることはありますか?

高梨先輩たちから教わったことをすべての方に分かりやすくお伝えするというのは本当にむずかしいことなのですが、私がメディアに出ることによって、スキージャンプという競技がより身近なものになればと思っています。

―メディアに出られたりする中でいろんな人との付き合いなども出てくると思いますが、人付き合いという面で気をつけていることなどありましたら教えてください。

高梨今まで競技のなかでの世界でしか生活してこなかったのですが、今年になってもっといろんな職業の方々とお話しする機会が増えました。 この春に選手の方々からお話を聞く機会があったのですが、そのときに出た「最終的にやはり勝敗を決めるは人間力だ」という言葉がとても胸に刺さりました。 この「人間力」というのはジャンプに限らずどんな競技にも大事なものだと思っています。たとえ個人競技であっても、そのチーム全体を見渡せるような力を持っている選手は最終的に強いんだなあと、いろんな方々からお話を聞いていて実感しています。

―これからアスリートとして世界を目指す人たちに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

高梨どんな競技も、上達するにはその競技を「好きだ」という気持ちが一番大事だと思います。どんなに苦しい練習であっても、自分が活躍している姿とか楽しんでる姿を想像するだけで乗り越えられると思います。 その一皮むけた強い自分がいることを想像しながら競技や練習に取り組むこと。そうすると、自然と結果はついてくると思います。がんばってくださいね。

高梨沙羅

高梨 沙羅 選手

所属クラブ クラレ。日本体育大学に在籍
2011年第53回HBCカップジャンプ競技会、女子の部にて大倉山シャンツェの女子バッケンレコード141mを記録。 同年2月に開催されたコンチネンタルカップでは、国際スキー連盟公認国際ジャンプ大会での女子選手史上最年少優勝を果した。
2012年インスブルックユースオリンピックで金メダルを獲得。その後ノルディックスキージュニア世界選手権、FIS女子ワールドカップ個人第11戦蔵王大会にて優勝。 2012-13シーズンは、前年に続きジュニア選手権で連覇をするだけでなく、ワールドカップで2戦残して、史上最年少での個人総合優勝を成し遂げた。
2013-14シーズンでは、ロシア・ソチ五輪出場を果たし、4位入賞。シーズンワールドカップ個人では18戦15勝という圧倒的な結果を残し、FISワールドカップ女子最多優勝記録を塗り替え、2年連続のワールドカップ総合優勝を飾った。 2014-15シーズンでは、世界選手権個人4位、混合団体3位。ワールドカップでは13戦6勝と年間最多優勝数を記録するものの、僅差で総合順位2位で終了。シーズン終盤に4連勝をあげ、ワールドカップ通算30勝を達成。 2015-16シーズンでは、FISワールドカップにおいて10連勝を飾る14勝をあげ、2年ぶり3度目の総合優勝。3個目のクリスタルトロフィーを獲得した。

始めよう!アスリートライフスタイル!

アスリートにとって進路選択は大きな壁です。強くなるためには練習に専念できる環境が必要だけど、勉強も頑張りたい──。高梨選手のように、常に2つのことを同時に頑張るのではなく、限られた時間の中でいかにパフォーマンスを高めるかを考え、様々な方法を駆使して24時間を上手く活用し、あなた自身のアスリートライフスタイルを構築していくことが大切です。また、一見関係ないと思われがちな競技以外の活動の中にも、実はパフォーマンス向上のためのヒントがたくさんあります。ぜひ自分の知らない世界をのぞいてみてください。パフォーマンス向上につながる大きな発見があるかもしれません!

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