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アスリートライフスタイル

スペシャルインタビュー▼ 動画の内容をインタビュー記事でさらに詳しく!

サッカー 熊谷紗希選手インタビュー

「今」を着実に積み重ねていくことが、環境の変化への対応を可能にし、それが余裕を生み出し、成長する喜びへとつながっていく。
熊谷紗希

2011年ドイツW杯では、全試合にフル出場し、決勝の米国戦では自らのPKで優勝を決めたサッカー女子日本代表の熊谷紗希選手。今や「なでしこ」に欠かすことのできないトップ選手として活躍している彼女は、変化し続ける環境の中で何を意識し、どう対応してきたのか?熊谷紗希選手が築いてきたアスリートライフスタイルに迫ります。

「本当に好きなこと(サッカー)をやるなら、必要なこと(勉強)もやる」
海外移籍で感謝した「両親の訓え」

―小学生の時から、サッカーだけでなく、勉強にも力を入れてこられたそうですね。

熊谷小学校の時から(両親に)「本当に好きなことをやるなら、(他の)やらなきゃいけないこともやりなさい」というふうに育てられたので、小、中(学校)はサッカーだけでなく勉強もすごくやっていましたね。

―なぜ、ご両親は「勉強も頑張りなさい」とおっしゃっていたと思われますか?

熊谷両親が教師ということもあるのですが、将来につながるからと。直接言われたわけではないのですが、(今考えると)そんな感じかなと思います。

―大人になった今、「あの時、勉強も頑張ってきてよかった」と思うことはありますか?

熊谷それしか思わないというか、本当にその時は全然やりたくなかったですし、正直、両親とちょっとぶつかったりもしましたけど、今となってはある程度勉強のやり方を小さい時に覚えたことで、移籍の際にドイツ語やフランス語の取得も早くできたというか…すごく(今に)つながったと思います。

―勉強することが苦にはならなかった?

熊谷そうですね。(語学の勉強を)やらなきゃ(海外で)生きていけないというのもありましたが(笑)、小さい時に勉強のやり方を覚えたのが役立ったのか、(勉強を)やること自体も苦にならなかったです。そういう意味で、勉強嫌いじゃなくて良かったと思いました。

様々な状況下でも、勉強と両立しつづけた高校・大学時代。
限られた時間の中で自然と身に付いた「短期集中力」

―学生時代は勉強とサッカーとの両立は大変だったと思います。どのようにして両立されたのでしょうか?

熊谷大学では、出られる時にいかにきちんと授業に出て講義を聞くかということが大事でしたね。遠征や合宿で長期間行くことができなかった時は友達に助けてもらいました。テスト前には、練習が終わってから夜に大学の方に戻って、友達に付き合ってもらって、夜中ずっと勉強することもよくありましたね。
高校の時も、2年生頃から年間の半分あるいは3分の1ほど、代表の活動で授業に出ることができなかったので、時間のない中で要領よく勉強しなければいけませんでした。そういう意味では、短い時間での集中力というのは養えたかなと思います。

15歳で親元を離れて入った「新しい世界」新しい環境と初めての経験が、「日本代表入り」という目標を明確に。

―高校の時には、地元の北海道から宮城県の高校に進学されました。15歳で親元を離れ、新しい環境に身を置いたことで、サッカーへの意識は変わりましたか?

熊谷全国大会に出場して優勝するとか、なでしこリーグのチームと試合するといったことは高校に入ってから初めて経験したことだったので、「新しい世界」という感じはしましたね。サッカーへの意識が変わるという意味でも、大きな転換期になったと思います。
ずっと「日本代表になりたい」という気持ちはすごくありましたが、中学の時までは、まだ見えない世界でした。でも、高校に入って、なでしこリーグのチームの代表や代表候補の選手たちと対戦する中で目標に対しての意識というのも変わっていきましたね。

「毎日毎日、1回1回の練習を大事に」
世界の頂点につながった常に大事にしている「今」の積み重ね。

―2011年ドイツW杯では、初優勝に大きく貢献されました。あのような最高の瞬間を迎えられたのは、それまでのどのような積み重ねや、ライフスタイルがあったからだと思われますか?

熊谷毎日、一番「今」を大事にしているというか、「今、自分にできることは何か」ということを考えてやっているので、そういった意味では「今」の積み重ねが結果につながると、あの時も今もずっと思っています。W杯で優勝することができて本当に嬉しかったですけど、そこが終わりではありません。これからもう1回(W杯で)優勝するだとか、オリンピックでメダルを獲るためには、今やるべきことをやることが一番だと思っています。だから、毎日毎日の1回1回の練習をすごく大事にしています。

―いつ頃から、「今を一番大事にする」という考えを持たれたのでしょうか?

熊谷もともとサッカーが好きで始めて、サッカーが好きでずっとやってきたのですが、そんなふうに考えてやるようになったのは、多分、高校で先生に色々と教えてもらったからだと思います。先生は「練習で一番一生懸命にやりなさい。それだけ練習で一生懸命にやっていたら、試合では余裕が持てるから」と。その教えは、今もすごく意識していて、普段の練習から常に全力でやることが自分の強みでもあると思っています。

「なでしこの一員」として見られている意識。環境の変化にあわせた、立ち居振る舞いが大事。

―W杯優勝後は、国内でも一気に「なでしこ」の知名度が上がりました。周囲の環境もガラリと変わったのではないでしょうか?

熊谷そうですね。日本でもいろんな方から「娘がサッカーを始めました」などという声をいただいて、沢山の女の子がサッカーをやるようになってくれました。それは選手としては本当に嬉しいことで、そういうところでの変化を一番に感じましたね。

―ご自身にも変化はあったのでしょうか?

熊谷私はドイツに移籍することが決まっていたので、変わらなくてはいけないことだらけでした。だいたい予想外のことが起こります。たくさん。でも、とにかくいち早く順応して結果を出さなくてはいけないという状況で、すぐに(ロンドン)オリンピック予選もあって、なかなかゆっくりと考える時間はなかったのですが、あの時から日本の女子サッカーが世界でも少しずつ認められ、日本国内での評価も上がって、(女子が)サッカーをやる環境も変わっていったのかなと思います。

―注目される存在になったからこそ、心がけていることはありますか?

熊谷前は本当に誰も知らないような状態の中だったので、そういった中では自分(のこと)だけでなく、「なでしこジャパンの選手たち」というかたちで見られているといった意識はありますね。応援したくなるようなというか、目指したいと思ってもらえるような立ち居振る舞いだったり、対応というのは必要になってくるかなと。

ブログは自らを振り返る良い機会であり、メッセージ発信の場。影響力の変化に応じて、内容の選択も必要に。

―熊谷選手はブログをされていますが、情報を発信する意味とは?

熊谷最近思うのは、若い選手だったり、「海外に出たい」という選手は、海外での生活ってほぼわからないと思うので、「どんな生活をしているのか」「どんなことをやっているのか」ということをみんなに伝えられたらなと思って私はブログを更新しています。ブログなんて自己満足かもしれないですけど、自分自身を見返すいい機会にもなるんです。

―影響力が大きいアスリートだからこそ、情報発信において、気を付けていることはありますか?

熊谷基本的にネガティブなことは言わないようにしています。他のチームのことはもちろん、自分のチームの情報も言わないですし、絶対に個人的な話とかは出さないです。個人的なところは出していいことはないから。

1年目より2年目、2年目より3年目……。成長し続けている「自分」を感じているからこそ、プレーが楽になり、楽しさも成長も加速する。

―海外リーグでは6シーズン目となりますが、ご自身のパフォーマンスはどのように変化したと感じられていますか?

熊谷もちろん、自分自身でも自分の成長を感じますし、やっぱり海外に出て1年目より2年目、2年目より3年目と、チームの中での評価も違うし、どんどん自分がやれることが増えると自由になるので、そういった意味では今が一番サッカー楽しいです。

―ご自身の成長はどういうところに感じていますか?

熊谷サッカーをしていて、余裕ができました。プレーの中で余裕が出てくるといろんなことができるようになってくるんです。そのためにはいい準備をしなくてはいけないんですけど、準備の仕方もわかってきましたし、そこが一番成長したところかなと思います。

将来は海外での経験を伝える存在に。パフォーマンス向上に一番必要なのは「競技」も「競技以外」も楽しむこと。

―これからについては、どのように考えられていますか?

熊谷(将来は)自分の経験を伝えたいので、サッカーの指導者だったりサッカーのことを伝えることがしたいですね。具体的にこれというのはまだないですけど、ドイツとフランスのサッカーを見ていることもそうですが、自分が経験しているからこそわかることだったり、自分の経験というものを伝えていけたらいいなと思います。

―最後に、これからそれぞれのライフスタイルを構築して、頑張っていこうというアスリートたちにメッセージをお願いします。

熊谷私はとにかく生活を楽しむように(しています)。アスリートなのでサッカーが一番ですけど、そこ以外のところも楽しめるように、楽しみを見つけられるようにしていくことがいいのかなって思います。楽しくないとうまくならないし、楽しくないと次につながらないので、そういったところを意識してやるようにしています。

熊谷紗希

熊谷 紗希 選手

フランス オリンピック・リヨン所属
日本代表として2011年FIFA女子ワールドカップ優勝メンバー、翌年2012年ロンドンオリンピック銀メダル、2015年FIFA女子ワールドカップ準優勝と日本代表として不動のセンターバックとして活躍。
チームリヨンではボランチもこなし2015-16シーズンはリーグ優勝、カップ戦、チャンピオンズリーグ(CL)で優勝を勝ち取り、さらに自身初となるMVPを獲得!日本を代表する選手に成長さらなる飛躍に期待!

始めよう!アスリートライフスタイル!

W杯優勝を経験した後、熊谷選手を取り巻く環境が大きく変化したように、パフォーマンスが向上するにつれて、アスリートは社会で「見られる」存在となり、大きな影響力を持つようになります。それに伴って、インタビューやSNSなどで自分の考えや情報をしっかり発信することが求められます。やみくもに言葉を発信するのではなく、社会の中のアスリートとして何を、どのような言葉で伝えるべきなのか考えながらふるまうことが大切になります。国際オリンピック委員会(IOC)はアスリートがSNSを使用し情報を積極的に発信することを推奨しています。なぜなら熊谷選手のように練習を振り返る良いツールになったり、スポンサーや支援者の獲得に繋がったりと、パフォーマンスの向上に大きく影響するからです。ぜひアスリートとしてのあなた自身や競技について積極的に伝えることを始めてみてください!

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